ジェリクルキャッツ

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漸く一輪開いた桜の木の下のベンチで、 おばあさんが腰掛け、雨にうたれていた。  こちらはコンビニで今月の支払いを終えてきたところ。 時間があり、傘を持っていたので、おばあさんに声をかけた。  バスをお待ちの時間、20分余り。傘で屋根をつくることにした。 おばあさんは、吹かせていたタバコをしまい、お礼にと言って、穴のあいたテレフォンカードを差し出した。コートにはあちらこちらに(恐らくタバコで焦げた)穴があき、メガネの端はセロハンテープで固定されていた。 私は、気にしないで、と言った。  お話を伺えば、途中で所持金がなくなったためタクシーを降りたとのこと。 お手元には杖、と、タバコ。  私は、雨も降り続いているし、タクシーで帰ることを提案して、拾うためにとりあえず車道へ向かった。  おばあさんの足は、思ったより動けなかった。 腕につかまってくれたおばあさんは、「私ね、勉強をして、みどりのおばさんになりたいの」と、疑う隙もない夢を明るく話してくれた。77歳だそうだ。医師から透析をすすめられているらしい。  ちっともタクシーが来ないので、迎車することにした。 5分で来るといったのに、もう15分を過ぎていた。 電信柱に必死にしがみついている姿を見て、なぜ先に手配しなかったんだろうと反省した。  旦那さんがケチで、がっちりお金の管理をしており、よこしてくれないらしい。「でも、いざというとき安心ね」と言えば、「喧嘩ばかりでね、もう帰ってくるなとか言うのよ」と言うので、「非道いわね!」と、私は女性の味方をした。 おばあさんは 2017年の手帳に、私の名前と電話番号を書かせた。 「覚えてなくていいですよ」といえば、 「じゃあ、死ぬ3日前に思いだすかもしれないわ」と、おばあさんは可愛らしい顔で笑った。  「あなたは、クリスチャン?」 「いいえ、無宗教ですよ。でも、死んだ家族が守ってくれています」 「私はね、元気な頃は2時間かけて教会に通っていたの」 「そんなに遠くまで行かなくても、神様は近くにいてくださいますよ」 「教会にお墓を買おうと思っているの。お金持ちは高いお金を出すけれど、ない人は お気持ち でいいのよ」 「へぇ、そうなんですね。よい情報をありがとうございます」 「でも、火葬に70万円ほどかかるのよ」 「えええっ そうなんですか?でも、行政支援とかもあるみたいですから」 「そうね、知らないと損するのよね」  タクシーは、20mほど先に停車した。 二人でゆっくり、ゆっくりと、歩みを進めながら、 「もう◯◯交通タクシーは使わないわ」と私が呟いたら、おばあさんは「そうね」と笑った。  ドアを開けた運転手は、あからさまに面倒そうな顔をしていた。(路駐だったから仕方がないかもだけど) おばあさんの足は、あがらなかった。 靴を持ち上げ、漸くシートの端っこにお尻があがったとき、いつも祖父の介護をしている母の苦労を思った。  「運転手さん、私◯◯って言います。よろしくお願いしますね!」 と、念押ししたら、はい、はい、と首を斜めに頷いた。 ドアが閉まる前におばあさんは、  「長生きしてね」  と、私に言った。  車が去った後で、ふと冷静になった。 〝ケチな夫〟〝タバコを買いに来てお金がなくなった〟〝帰ってくるな〟 もしかして、一人歩き(徘徊)…?  この前みたイジメ?の少年もそう… 私はいつも、よかれと思ったことが、結果、他人のためにならない経験は多い。 バタフライエフェクトのように、自分の思いが世界に歪みを与えてしまうことが、すっかり怖くなってしまった。  友に連絡をしよう。話題はなんでもいい。 早く定位置に戻らなければ、また、バランスを失ってしまう。  友は、AnimeJapanの現場から、サテライト(河森正治EXPO)の画像を送ってくれた。かくして、さっきの出来事はひとつのストーリーにおさまった。  ちゃんと帰れたかしら… ジェリクルキャッツみたいだったなあ…(CATSの)。 旦那さんと仲良くやっていますように。 #おばあさん #タバコ #桜 #雨 #2017 #テレホンカード #タクシー #クリスチャン #ジェリクルキャッツ #CATS

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