太陽の塔の内臓

その取り壊されるはずだった化石の体内には、脈々と赤い血が通っていた。

体内行きのチケットに押された入場済スタンプは万博当時と同じものだそうで、太陽の塔とタロさんに会える♪と思っていたけれど、当時訪れた母にも会えた気がしてなんだか嬉しかった。
母の記憶をきけば、「気持ち悪かった」だったが、入場してすぐに「確かに!」と共感。さすがタロさん、時代を超えて目論見通りである。

太陽の塔の内臓は、にゅるにゅるっとしたタロさんお馴染みの力強い曲線の動脈(生命の樹)が天井高く伸びており、バカでかい妙にリアルな動物たちが高所の枝に鎮座している。
あー、やばいな、これ……タロさんは、高所恐怖症にも容赦はないらしい。タロさんの芸術には挑まなくてはならないのだ。

リニューアル箇所など、ガイドさんに小学生のように質問しては、〝あー、タロさん的には、「そんな飾った光じゃなくていいよ。当時のまんま青と赤の単色の光でも、こいつらは十分に躍動しているじゃないか」とか言いそうだなあ…そもそも「未来?進歩?なんて言われても、過去も現在もなにも決定してないじゃないか。なにが人類の進化だ。縄文土器の凄さをみてみろ!」的なことを仰っていたみたいだしなあ。〟などと時代の狭間で考えさせられた。

とはいえ、無数の柔突起は、胎内音を反響させるためのデザインであったとか、恐竜の口や腹が動くなんてのは当時は驚愕の技術だったみたいだし、(ガイドさん曰く、メンテが大変だし、今じゃ珍しいものでもないので稼働させていないんだとか、残念) その機器が内臓されているブロントザウルスなんて1トンもあるらしく、それがえらい高所の枝にのっかっているもんで、撤去しようにも出来ないのだとか。タロさん、ハンパないな…と、あらためて舌を巻く。
恐らく、生命の樹なんて、タロさんの意思なくしては通せなかった企画だろうと思う。 「人間はどんどん進化していくが、肉体には根源的なものと未来が含まれている。人間は素晴らしくも悲しくもある。過去を振り返り、いま置かれている立場とくらべどちらが素晴らしいか考えて欲しい」
いま置かれている立場といえば、ちょうど太陽の塔の腕の脂肪とクロマニヨン人が見える頃、私は無邪気に下を覗き込む子供たちを横目に、前かがみに壁や床に張り付いていた……(高所限界)。見兼ねたガイドさんが、エレベータで地上へ戻してくださった。

ーーたとえ孤独でも時代に迎合するなーー
昔、おっかなく見えた化け物は、いまは頼もしく強く大きな父の背中のようである。