タオルを巻いて

バスタブを出るのは2回目だ。
一度目は風呂場に響く、つけっぱなしのテレビの音が不似合いで、ボリュームを下げにいき、
今度は、携帯電話をとりに。このブログを書くために。
年内の舞台稽古も終わって、なんだかバスタブにお湯をはってみようと思い立ち実行してから、実に一時間が経過しようとしている。
買ったもののなかなか減らないバラの香りの入浴剤を入れて、今私はミルク色のお湯に浸かっている。
ただしお湯はぬるめの胸の下辺りまで。
心臓に負担がかかるので…という、いつぞやの健康番組のナレーションの声がお湯をはる度にきこえてくるからだ。
今日はご忠告頂いた通りほんとうに寒くて、お湯に浸かると体に浸透してくる温度が心地よく、
あの宇宙人外人がCMでいう通り、「極楽だ~」と思わず口にしてしまった。私もこの国の人なんだなぁ。
こんな口調なのは、さっきまで村上春樹の本を読んでいたせいだ。
暫くの間、台本に主人をとられて寂しそうにしていたので、読みかけの「羊をめぐる冒険」を読むことにした。
ほんとうは、また「ノルウェーの森」を手にしたい気分ではあったが、タイミング的にそれはまずい(戻ってこられない)と思ったのでやめた。
途中、いよいよ額の辺りが熱で窮屈になってきたので、バスタブ横の子窓をあけた。
すると、思ったより激しい雨の音に驚いた。
我ながらその余裕に、この冷たい雨の夜に勝った気がした。
それに、この冷たい外気も、のぼせた体の熱は奪えないようだ。
テレビの音より断然いいやぁ。この演出にも満足して、引き続き文字を目で追っていると…
まるで読んだはずのセンテンスがめくれあがるような錯覚に陥る…
ちょうど「第五章 鼠からの手紙とその後日譚」を読んでいるときには、なぜかカフカの…タイトルが出てこないが、ある日、自分が部屋の中で醜い虫になっていた…という話しに変わっていた。
脳の変換経路がおかしくなったらしい…。
バックアップデータに現在の情報が上書きされてしまうみたいに。
それどころか、一文読む度に、断片的なある日の風景がフラッシュバックするようになってしまった。
これはどういうわけか…
海の家の横で、アジのひらきを買おうか迷ったお店。
1歳の弟が高熱をだして病院へ行ったとき、家で留守番をしていたときのストーブ。
お庭に咲いていたピンクのたち葵にはっていた蜘蛛の巣。
いつも通っている稽古場の最寄り駅の階段。
昔住んでいたマンションからみえた新宿の夜景。
ティモテシャンプーのパッケージ。
昼下がり、キーボードに向かう彼の白のシャツ…
雨のせいだ。
この激しい雨の音が、
「そんなことをしていていいのか?お前は。やり残したことはないか?忘れてはいないか?」という声にきこえる。
私は、
「せっかく溜めたお湯なのだ。もう少しゆっくり浸からなければならないのだ。」と、本に目を戻す。
文字はゆらゆらと湯気と一緒にバスタブの上にとんでいる。
本題に戻るが、
本を読めないほどのぼせたので、携帯を隣の部屋にとりに行ったのだ。
面白い。
なんだか、自分の頭をすり抜けて行く意識を、意味もなくこうして書きとめたくなる執筆者の気持ちが、なんとなく分かるような気がする。
そうこうしているうちにじゅうぶんな時間が過ぎた。
あますことなく入浴したことを、お湯の温度が語っている。
さぁもう出よう。
なんだ、今日は今日のうちに寝るはずだったのが、もう明日になってしまったではないか。
携帯をバスタブにぽちゃんする前にやめよう。
もう誤字などチェックする頭がないので、このままアップします。
お許し下さい。
そして、お付き合いありがとう。
また来週!
おやすみなさい。
雨は相変わらず激しいです。

One comment on “タオルを巻いて

  1. MOVE より:

    麻美さんの日記・・・
    最近は見るたびにいつも、
    素敵な物語を読んでいる気持ちになってます
    今年のオイラはこの数々の物語のお陰で
    自分の肌で感じる季節とともに
    麻美さんの日記からも気温の変化を感じ
    麻美さんの日記からも季節の移り変わりを感じ
    麻美さんの日記の詩のお陰で
    2007年を何倍も意味深く過ごせた気がしてます。
    普段は特に意識しなかった風景とか
    毎日は当たり前に手にしてきた物など
    この年末は妙に愛しくなって、
    明日の仕事納め前、思い出したかのように磨いたり
    自分にとって身近で大切な物を
    ちゃんと思い出して手にとれるような
    時間や気持ちの余裕を意識して持ちたい・・・
    そんな事も、麻美さんの日記に教えて頂いてます(^^ゞ

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